美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?―できるビジネスパーソンになるための管理会計入門!

多少古い本ではありますが、なかなか面白かったです。
有名な前作(餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか? (PHP文庫))は読んでいないのですが、今作は会計知識だけではなく、ERPパッケージ導入に纏わる話を扱っていてSI業界の関係者にも興味深い内容となっています。
僕にとっては今さら手に入れても遅い知識ですが、ERP導入やコンサルティングに関わるSI業界の新人さんなどは読んでみると良いのではないかと思います。

以前、ERPパッケージ導入の炎上プロジェクトに関わった結果、なんとなくボンヤリとパッケージを業務に合わせてカスタマイズするのはご法度で、業務部門の抵抗があろうとも、パッケージに合わせた標準的な業務とすることでしか、ERPの恩恵は得られないんだろうなぁ…と感じましたが、ERP導入の目的などはあまり理解できていませんでした。
この本を読んで、今更ながらこの根本のところが理解できたのがよかったです。

確かにあの時の案件も業務部門の要求を丸呑みにした奇怪で巨大なサクラダファミリアが出来上がりました。
それも当時、ERP導入を目指した企業のあちこちで起こっていた決して珍しくはない悲喜劇の1つだったのでしょうが。。

ユーザー企業のシステム部門は動かないシステムを前に業務部門から突き上げられ、障害を頻発させるベンダーを非難していました。
ただ、ベンダー側の利益の構造を考えれば、本当は極力カスタマイズを避けて、後々に禍根を残すべきではないとわかっていても、自らのメシのタネをみすみす手放すことはなかったんだと思います。
システム部門にしてもERPの知識などないですし、単なるコストセンターとしてしか認識されていない日陰の部門でしかなく、現状を変えることをよしとしない業務部門との力関係で思うように身動きもとれなかったのでしょう。
本来は社長の意向を受けたプロジェクトオーナーが全社に対して強権をふるうくらいでないと成功は望めないのだと思います。
まぁ前提がグダグダなこんな状態ではプロジェクトの失敗は必然だったんだと今では思えます。

ただ、管理会計というものも決して銀の弾丸というやつではなくて、机上の学問的なところもあるので、現実への適用の仕方を誤れば、またおかしな方向へ向かってしまうのかもしれないなとは感じました。
この本の事例にしても、わかりやすく説明する意図だとは思いますが、そのまま現実に当てはめるには適切でない表現もあるように見受けられましたし。。
やはり情報というのはそれ自体には可能性しかなく、本当の価値を生み出すのは使い手の目的意識と使い方なんでしょうね。